核内受容体COUP-TFが、錐体視細胞で発現するオプシン遺伝子の発現を制御し網膜内の空間的発現パターン形成に寄与する事を見いだしており、そのメカニズム解析においてエピジェネティックな制御を明らかにする事が本研究の目的である。本年度はまず、ヒト網膜芽細胞腫由来の細胞株(Y79)を用いて、内在性のCOUP-TFsの発現を抑制した場合のオプシン遺伝子プロモーター領域におけるDNAメチル化状態を調べたところ、赤オプシン遺伝子においてDNAメチル化パターンがCOUP-TFIIの発現抑制により変化する傾向が認められた。げっ歯類においては、この領域内にDNAメチル化されうるサイトはない事から種特異的な制御機構の存在が示唆された。現在、COUP-TFIIによる赤オプシン遺伝子内の発現制御領域を同定しようと試みており、DNAメチル化との相関性を検討し明らかにしたい。また、マーモセット網膜におけるCOUP-TFIIの発現が錐体視細胞で観察されたが、発現レベルが網膜領域内で異なる事が見いだされた。オプシンの発現がCOUP-TFIIの発現と対応するか現在検討している。また、COUP-TFIIと相互作用する候補因子についてオプシン遺伝子の発現に影響を与えるか調べた。その結果、オプシン遺伝子の発現に影響を与える事が見いだされ、さらにエピジェネティックに作用する事が報告されている因子が含まれていた事から、この因子を元にメカニズム解明が進むと期待される。青オプシン遺伝子についてはマウス網膜の背側、腹側でDNAメチル化パターンに差は見られず、ヒストンの修飾など他のエピジェネティックな制御機構の介在が示唆された。
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