研究概要 |
昨年度までにGPIアンカー型タンパク質の小胞体-ゴルジ体間の輸送が遅延する変異株を取得し、その責任遺伝子PGAP5を同定した。さらにPGAP5タンパク質はGPIアンカーの糖鎖構造を変化させる酵素であることを明らかにした(Fujita et al.,(2009)Cell,139:352-365)。本年度は、PGAP5によるGPIアンカーの構造変化がどのようにタンパク質の輸送に関与しているか、解析を行った。その結果、PGAP5欠損細胞では小胞体においてCOPII小胞が形成され、タンパク質が輸送される部位「ER-exit sites」へGPIアンカー型タンパク質が濃縮されないを明らかにした。このことから、小胞体におけるGPIアンカーの構造変化は、ER-exit sitesへのソーティングに必要であることが示された。そこで、野生株とPGAP5変異細胞株を用いて、GPIアンカー型タンパク質に結合するタンパク質を質量分析により同定した。その結果、p23、p24と呼ばれるタンパク質が野生株特異的にGPIアンカー型タンパク質と共沈することが分かった。p23、p24はp24ファミリーと呼ばれるタンパク質で、ファミリー間で複合体を形成し、小胞体とゴルジ体をリサイクリングするタンパク質である。これまでに出芽酵母のホモログがGPIアンカー型タンパク質のGas1pの輸送に関与していることが分かっていたが、その詳細については明らかでなかった。我々の結果は、p23、p24が構造変化(リモデリング)したGPIアンカー特異的にタンパク質と結合し、輸送を行うカーゴレセプターとして機能していることを示すものである(Fujita et al.,投稿中)。
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