研究概要 |
出芽酵母におけるスフィンゴ糖脂質(GSL)の意義を明らかにするために,以下の3つの課題に関して検討を行った. 1.GSL検出プローブの作製 21年度に調製した抗原(IPC,MIPC,M(IP)_2Cの混合物)を用い,モノクローナル抗体の作製を行った.その結果,IPC,MIPC,M(IP)_2Cの全てに反応するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得た.現在,その抗体の性質を詳しく調べている. 2.GSL改変酵母における細胞膜タンパク質の挙動解析 21年度に構築したFRAP解析の実験系を用いて,様々なGSL改変酵母における膜タンパク質の流動性を解析した.その結果,特に△sur2△csg1△csh1変異体において,膜タンパク質の動く分子の割合が著しく低下し,動く速度も低下した.この結果は,GSLの糖鎖部分の短縮と脂質部分の水酸基(スフィンゴイド塩基の4位)の欠失が,膜の流動性を著しく低下させることを示唆している. 3.Csh1へのマンナン付加メカニズムの解明 MIPC合成酵素であるCsh1とCsg1は相補的な機能を持つが,それぞれに付加されるN結合型糖鎖の構造は大きく異なる.Csg1の糖鎖は,一般的な細胞内タンパク質に見られるコア型糖鎖であるが,Csh1の糖鎖は細胞膜タンパク質などに見られるマンナン型糖鎖である.Csh1とCsg1において内腔側の相同性は非常に高いが,糖鎖付加の位置が異なる.そこで,Csg1にCsh1と同様の部分に糖鎖付加部位を導入した所,新たに付加されたN結合型糖鎖はマンナン型となった.この結果から,Csg1はCsh1と同様にマンナン型糖鎖へ修飾されるポテンシャルを持つことが示された.つまり,マンナン型糖鎖の修飾には糖鎖付加部位の位置情報も重要であることが示唆された.
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