<血漿由来グレリン切断酵素の同定と短縮型グレリンの生成> 本研究ではグレリンが血中でペプチド分解されることを発見し、ウシ血漿より責任酵素の精製をおこなって活性化プロテインC(APC)を見出した(佐藤ほか、Peptides 32: 2183-2190)。また、プロテインCをAPCへ変換するヘビ毒Protacをヒト血漿と混合すると短縮型グレリン15が生成することをイムノアッセイにより確認した。さらに、この短縮型グレリン15はThrombin-activatable fibrinolysis inhibitorによってC末端が切断されてグレリン14を生じることも見出した。EGR1転写レポーターアッセイにより、グレリン15は全長型と同様に受容体活性化能を有し、いっぽう受容体非依存的にマウス筋芽細胞C2C12の分化を促進する作用をもつことを明らかにした。 <グレリン脱アシル化酵素APT1の発現調節機構> 本研究ではAPT1がグレリンの脂肪酸修飾を加水分解する酵素であることを同定・解析をすすめてきたが、APT1の発現調節機構については不明な点が多い。そこでマウス肝臓を用いAPT1プロモーターの転写開始点を同定し、その5'上流側約2.5 kbpの領域に注目してレポーター遺伝子解析をおこなったところ、-86/+13領域が基本転写に重要であることが明らかになった。さらにアデニル酸シクラーゼの賦活剤である神経ペプチドPACAPはレポーター活性を25%低下させたことから、APT1発現はcAMPにより負の制御を受けていると予想される。いっぽう、この領域には転写因子Sp1の認識配列が存在し、認識配列へ変異を導入したレポーター遺伝子の活性低下がみられた。したがって、APT1の転写調節はSp1により正に制御されている可能性が考えられる。(中村・佐藤ほか、第35回日本分子生物学会年会)
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