研究概要 |
マウス繊維芽細胞NIH3T3を血小板由来増殖因子(PDGF)で刺激した際に引き起こされるアクチン細胞骨格の再編に対して,Arf低分子量G蛋白質のエフェクターと考えられているASAPファミリータンパク質およびRab11-FIPファミリー蛋白質の過剰発現が及ぼす効果について検討した。これまでの報告通り,ASAP1の過剰発現ではPDGF刺激によって引き起こされるアクチンのダイナミックな再編構造であるCircular Dorsal Ruffles(CDRs)の形成が有意に阻害された。また,ASAP1のアイソフォームの一つであるASAP3でも,ASAP1とほぼ同程度の阻害効果が認められた。一方,同アイソフォームであるASAP2では有意な阻害効果は認められなかった。私は以前,ASAP3が,ASAP1同様,FIP3と結合することを報告しており,この結合能がCDR形成に対する阻害効果と関係している可能性が示唆された。今後は,その点についても解析を進める予定である。 ArfはホスホリパーゼD(PLD)およびホスファチジルイノシトール4リン酸5-キナーゼの制御を介して,ホスファチジン酸(PA)およびホスファチジルイノシトールリン酸(PIPs)の産生を制御している。これら脂質はゴルジ体における膜小胞の形成や細胞膜でのラッブリングに重要な役割を果たしている。本年度の研究では,ゴルジ体に局在し,PAを分解する活性をもつ細胞内型ボスポリバーゼA1であるKIAA0725に注目し,その局在化機構と細胞内小胞輸送における機能について解析した。Arf1の過剰発現はKIAA0725のゴルジ体への局在化を促進しなかったが,KIAA0725のWWEドメインを含むN末端領域の欠失がその局在を大きく変化させたことからKIAA0725は少なくともN末端領域を介して膜と相互作用していることが示唆された。
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