研究概要 |
マウス繊維芽細胞NIH3T3を血小板由来増殖因子(PDGF)で刺激した際に引き起こされるアクチン細胞骨格の再編部位,Circular Dorsal Ruffles (CDRs)は,アクチン細胞骨格再編とエンドサイトーシスが共役して起こる部位としてその形成制御機構が注目されている。本研究では,このCDRsを介した膜輸送の分子的基盤を明らかにすることを目的として,特にArfおよびRab低分子量Gタンパク質に注目して解析を行った。本年は,いずれのArfまたはRabアイソフォームがCDRsで機能しているかを明らかにするため,NIH3T3細胞で一過的に発現させたArfおよびRabの局在を解析した。その結果,特にArf3とRab4がCDRsに集積することを見出した。また,Arf6についても有意な集積が認められた。過剰発現によるCDRs形成に対する効果を検討したところArf6で強い抑制効果が認められた。本研究の昨年度の解析からCDRsにはArf6のエフェクターであるASAP1とFIP3が一部局在し,CDRs形成に対してそれぞれ抑制的および促進的に働くことを見出している。このことから,CDRsにおいてArf6-ASAP1/FIP3の経路が機能していることが示唆された。 ArfはホスホリパーゼDやPI4P-5-キナーゼの活性化を介して,生体膜の変形やシグナル伝達分子として働くホスファチジン酸(PA)やホスファチジルイノシトールリン酸(PIPs)の生成に関与する。本研究では,PA代謝に関与することが示唆される細胞内型ホスホリパーゼA1,KIAA0725pの膜輸送における機能についても解析を行った。KIAA0725pはPIPsと結合し,ゴルジ体から細胞膜への輸送を正に制御していることを見出した。CDRs形成およびエンドサイトーシスに対する効果について現在検討を行っている。
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