分子シャペロンClpBは、他の分子シャペロンDnaKとその補助因子であるDnaJ、GrpEと協力して、凝集タンパク質を再生すること(脱凝集)ができる特異な分子シャペロンである。ClpBはNドメイン、AAA1、ミドルドメイン、AAA2、の4つのドメインからなる。また、ClpBはリング状の6量体を形成して働くが、凝集したタンパク質をそのリングの中央の孔に通すようにしてほぐす活性(糸通し活性)を持つといわれている。 ClpBの6量体はそれほど安定ではなく、タンパク質濃度、塩濃度、温度などの条件に応じて解離会合を繰り返すため、生化学的実験の解釈が複雑になってしまうことが多い。そこで今回、ClpB6量体中の隣り合うサブユニットをジスルフィド結合で固定し、6量体構造の崩れないClpBを作成した。このClpBを用いることで、ClpBが働く上で、6量体が解離会合することの意義や、6量体中のサブユニット間の協同性について詳しく検証できるものと期待される。 また以前、好熱菌のClpBに変異を導入し、ClpPというプロテアーゼを結合させることによって、ClpBの糸通し活性を、基質タンパク質の分解という形で検出する系を作成している。現在、この実験系を用いて、AAA1、AAA2それぞれへのATPの結合やその加水分解、ClpBリングの中央に保存された芳香族アミノ酸などの、糸通し活性への関与について解析を進めている。
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