研究課題
ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)は細胞膜表面や細胞外基質の主要な構成分子として知られ、様々な生物学的現象に関与することが報告されている。しかしながら、その作用機序については未だに多くの点が不明である。本研究では遺伝学的手法が有効なショウジョウバエを用い、生体内におけるHSPGの機能、並びにヘパラン硫酸の微細構造の意義を明らかにすることを目標としている。特に、HSPGの重要性が指摘されている神経発生における機能に焦点を当て解析を進めている。まず、HSPG及びその修飾酵素の機能を明らかにするため、様々なHSPG関連遺伝子変異体の表現型を詳細に解析した。その結果、分泌型HSPGであるパールカンの変異体では神経筋接合部におけるsynaptic bouton(多くのシナプス領域を含む膨らんだ部分)の数や形態に異常が観察された。また、パールカン変異体におけるboutonの形態を透過型電子顕微鏡を用いて解析した結果、シナプス前細胞内で通常では見られないような異常に大きな小胞が多数存在し、またシナプス後細胞膜に特徴的なsubsynaptic reticulumが減少することが判明した。これらの異常はWntやBMPシグナルの異常により生じることが報告されている。従って以上の結果から、HSPGがその微細構造を介してこれらシナプス分子の機能を調節する可能性が示唆された。
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Trends in Glycoscience and Glycotechnology Vol.21, No.122
ページ: 354-356