研究概要 |
細菌べん毛モーターは、細菌の細胞膜に埋まった巨大な膜上生物機械である.この生物機械はイオンによって駆動される回転モーターとして機能するが,直径50nmにも達する巨大タンパク質複合体が流動性に富んだ生体膜上でどのように構築され,どのように維持・管理されるのかは分かっていない.本研究は,各々のモーター構成素子をGreen Fluorescence Protein(GFP)を用いて蛍光標識し,流動性に富んだ生体膜上における巨大タンパク質複合体の構築機構,および体膜上での機能維持のための機構を明らかにすることを目的としている. 平成21年度の研究では,モーター回転子構成素子のGFP融合タンパク質の発現系,および,課題の中心となる顕微鏡システムを構築した.またこの顕微鏡システムには当初の研究計画に先んじて,エバネッセント照明を用いた蛍光退色系を導入した.平成21年度に設置した顕微鏡システムおよびエバネッセント照明を用いた蛍光退色系を用いて,GFP融合タンパクが組み込まれたべん毛モーターに対して,退色後蛍光回復実験を行った.その結果,GFP融合タンパクが組み込まれた機能的なモーターにおいて,退色後の蛍光回復が観察された.生体膜上の生物機械である細菌べん毛モーターの回転子構成素子が,機能的に回転しているモーターにおいて交換されていることが明らかにされた.これらの成果はBiochem.Biophys.Res.Commun.2010 26 ; 394(1): 130-5.に掲載された.
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