研究概要 |
べん毛モーターはイオンで駆動される回転モーターであるが,この分子機械が生体膜上でどのように構築され,維持・管理されるのかは明らかでない.本研究は,モーター構成素子を緑色蛍光タンパク質(GFP)で標識し,生体膜上でのモーターの構築・機能維持の機構の解明を目的としている. 平成23年度の研究では,以下の項目について実施した. 1)べん毛モーター構成素子の分子数定量 モーター回転子のGFP融合タンパク質(GFP-FliG)が組込まれたモーターの蛍光退色から,1分子のGFP-FliGに由来する退色蛍光強度差を見積った.全反射蛍光顕微鏡と大腸菌の形状による蛍光強度差を補正し,機能的な単一モーターのFliG数を見積ったところ,過去の定性的な研究により想像されているものと同等の値が得られた. 2)べん毛構造体の構築部位の検証 本年度の計画では,べん毛の軸構造の遺伝子欠損株を作成し各欠損株においてべん毛構造体の拡散を解析する予定であった.各種変異体の作成の設計を進めていたが,3)の研究の進展が著しかったため,当初計画を変更し3)の研究の実施に重点を置くことにした. 3)大腸菌複数べん毛モーターの同調的な制御についての分子機構の解明 H22年度の研究で,複数べん毛モーターがリン酸化CheY(CheY-P)濃度増加/減少の方向性を伴った伝播(波状伝播)で同調的に制御されることを提唱し,H23年度にBiophys.J.(2011)100,2193に掲載された.本年度の研究で,CheY-Pシグナル消去を担う脱リン化酵素CheZの細胞極局在が,方向性を伴ったCheY-P濃度減少の伝播に重要であることを明らかにした.本結果は学術雑誌への投稿を準備している.
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