研究概要 |
樹状突起スパインの近傍で,ケージドグルタミン酸をMg^<2+>を含まない細胞外液中で反復して二光子アンケージングすると,刺激されたスパインにおいて選択的に,スパイン体積の増大と,グルタミン酸電流の増強が生じることが知られている。スパイン体積の増大とグルタミン酸電流の増強は,スパインのNMDA受容体を介して流入したカルシウムが引き起こす。細胞内にカルシウム指示薬を負荷して刺激時のカルシウム動態を測定すると,スパインにおいてもっとも強いカルシウム上昇がみられたが,樹状突起幹においても弱いカルシウム上昇が測定された。樹状突起幹におけるカルシウム上昇は通常,スパインから数μm程度の範囲に限局していた。これはスパインのカルシウムが,スパインネックを介して拡散した結果と考えられた。しかし一部の測定においては,より広範囲に強いカルシウム上昇が認められることがあった。これはスパインからの単なる拡散では説明できず,カルシウム誘発性カルシウム放出が起きている可能性が考えられた。そこで次に,樹状突起幹におけるカルシウム上昇の役割を解明するために,ケージドカルシウムを細胞内に負荷して,樹状突起幹においてアンケージングを行いカルシウム上昇を引き起こした。しかしこれによってスパイン形態に顕著な変化はみられなかったことから,樹状突起幹でのケージドカルシウムによるカルシウム上昇は,単独では顕著なスパイン形態可塑性を引き起こすには不十分であると考えられた。
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