研究課題
研究期間の初年度に当たる本年度は、主な測定手法である過渡回折格子法の測定系の構築を行い、無事予想された感度および時間分解での測定が可能な装置の構築を完了した。また測定対象であるSalinibacter ruber由来のセンサリーロドプシンI(SrSRI)についても、室温溶液状態での測定に成功し、極めて良いシグナル強度の信号が得られた。これにより、これまで知られていなかった吸収変化を伴わない反応過程がSrSRIのフォトサイクル中にあることを過渡回折格子法により明らかにすることに成功し、現在この結果に基づく論文を学会誌に投稿準備中である。またこの結果を受け、研究計画時には来年度行う予定であった、トランスデューサータンパク質との複合体試料についての過渡回折格子法測定を前倒しして行ったところ、同様に極めて良いクオリティの信号が得られ、SrSRI単体と反応過程において違いがあることも明らかにした。また過渡回折格子法を使った拡散定数の測定により、SrSRI単体およびトランスデューサーとの複合体の二つの試料での分子拡散定数の決定に成功し、それぞれ可溶化状態であっても数十個以上の分子が会合したオリゴマーを形成するほど、分子間相互作用が強いことが明らかになった。本年度の結果はSrSRIの光反応を調べる上で、過渡回折格子法が十分な測定感度と時間分解能を持つことを示すものであり、計画以上の進展を見せた。これをもとにさらに次年度においてはCheタンパク質との相互作用や変異体実験などを行う予定である。
すべて 2009
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Biochemistry 48
ページ: 10136-10145
Journal of Molecular Biology 392
ページ: 48-62