本計画の目的は、β_2ミクログロブリンのアミロイド線維形成中に現れる、過渡的な線維末端中間体のキャラクタリゼーションである。以下に示す4つの手法は近年発達したNMR解析法であるが、この手法を用いることでアミロイド線維速度論的中間体のキャラクタリゼーションが可能だと考えた。4つの手法とは、I. 重水素交換モノマーモニタリング、II. 緩和分散法、III. 飽和移動差スペクトル法、IV. 常磁性緩和促進法である。 実験の手順はいずれの手法も試料調製、条件検討、測定、解析の順で進める予定であり、本年度の実験計画でいずれの手法についても条件検討の段階まで進める予定であった。現在の経過はI.は測定まで終了し、解析と論文執筆の段階である。II.は試料調製まで終了、III.は条件検討を進行中、IVは試料調整を進行中である。I、IIIについては予定通り遂行できたが、II.、IV.に関してはその段階まで到達しなかった。次年度はいずれの手法についても解析の段階まで遂行できるよう、計画の修正を考える。 I.の手法の進捗はとても良好で、現時点で実験結果の考察を行っている。アミロイド線維内でモノマー蛋白質の両末端部位は溶媒に露出し、中央部位は線維内に埋もれていることが分かっている。しかし少なくとも過渡的な線維末端中間体ではこの最終構造とは異なる構造をとっていることが分かった。しかし、実験結果に基づくとこの中間体構造について二つの可能性が考えられる状況であり、現時点では追加実験を行うことでいずれの可能性が正しいかを検討している。
|