研究概要 |
本課題では、電位依存性プロトンチャネルVSOPの、プロトン透過機構の解明が目標である。本年度はその中で、(1)トポロジーの推定(2)単一チャネル電流記録の実験系の確立を行った。(1)まず、電位感知やプロトン透過に重要だと考えられている第4番目の膜貫通領域(S4)について、生化学的手法を用いて解析を行った。まず、S4のそれぞれの位置にシステインを導入した変異体を作製し、システインに結合出来る試薬が結合出来るか否かを指標に、トポロジーを推定した。すると予想される膜貫通領域(マウスVSOPの195番目のグリシンから217番目のリシン)のうち、206番目のアラニンよりC末端側は、水に接することが出来る環境であることがわかった(PNAS,2010)。また、206番目のアラニンからC末端側を除去したマウスVSOPでもプロトン活性が維持されていることから、VSOPの機能にはこのアラニンよりN末端側が重要であることが分かった。今後は、他の膜貫通領域についても実験を行い、VSOP全体のトポロジーを推定する。(2)単一チャネル電流記録を測定するために、まず大腸菌に発現させたマウスVSOPを精製後、人工脂質に再構成し、チャネル活性があるかを調べた。すると、pH感受性蛍光試薬を用いた活性測定において、VSOPの活性が確認出来た。このことより、VSOPは大腸菌で発現させても機能的な蛋白質が得られることが分かった。今後は、大腸菌のスフェロプラストや脂質平面膜法による単一チャネル電流記録を試みる。
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