電位依存性プロトンチャネルVSOPは、ゲーティングとイオン透過が共役した全く新しいメカニズムを持っているチャネルであり、この動作機構の解明は大変興味深い。本課題では、VSOPのプロトン透過機構の解明を大きな目標とし、そのために、(1)膜貫通構造(トポロジー)、(2)プロトン透過に重要なアミノ酸残基の同定を行った。前年度では、電位感知やプロトン透過に重要だと考えられている第4番目の膜貫通領域(S4)について、トポロジー解析を行い、S4は膜貫通領域にも関わらず、水が大きく浸入していることがわかった。本年度は、残りの膜貫通領域(S1からS3)についてトポロジー解析を行い、膜貫通領域(S1からS4)のトポロジーを決定した。すると、S1とS2では大きく水が浸入している部位はなかったが、S3はS4と同様に水が大きく浸入していた。電位依存性K^+チャネルでもS3とS4には水が大きく浸入している報告があることから、この構造的特徴は電位依存性チャネルに共通であり、膜電位感知に非常に重要であると考えられる。また、S1とS2において、局所的に周辺が水環境であるアミノ酸残基(アスパラギン酸とグルタミン酸)があった。これらのアミノ酸残基に変異を導入すると、チャネル活性に大きな影響を与えることから、これらのアミノ酸残基はプロトン透過に重要なアミノ酸残基であることが示唆された。本課題により、VSOPのトポロジーが決定された同時にプロトン透過に重要なアミノ酸残基も同定出来た。今回の成果は、VSOPの動作機構の解明につながると考えられ、今後これらの解明により、電位依存性チャネル全般の電位センサー機構や、インフルエンザウィルスM2蛋白質やATP合成酵素などプロトンを透過する他のタンパク質のプロトン透過機構の解明に繋がると期待される。
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