天然変性蛋白質の基質認識過程を含む、蛋白質の折れたたみや機能に関わる構造変化を検出するために、新規の一分子蛍光観測装置を開発した。まず、変性した蛋白質の物性(構造の多様性とその運動性)を明らかにするために、酵母由来と緑膿菌由来のチトクロムcにこの方法を応用した。得られた一分子蛍光データを局所平衡状態解析により解析した結果、変性チトクロムcは約100ミリ秒の動的な構造多様性を持つことが明らかになった。次に、一分子観測装置を使用し、基質結合に伴う糖質関連蛋白質の構造変化を測定した。解析の結果、基質が存在しないときに、蛋白質の開閉運動がミリ秒の時間領域で観測された。この開閉運動が基質結合時間より十分に遅いことから、この蛋白質はinduced fit型の基質結合様式を持つことが示唆された。今後、上記の手法を天然変性蛋白質に応用することで、天然変性蛋白質の物性を明らかにできると期待される。
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