研究概要 |
ヒストンのアセチル化は遺伝子の転写活性化に密接に関係すると考えられているが、詳細な制御メカニズムはまだ明らかにされていない。当研究では、ヒストンのアセチル化を介した転写活性化機構を分子レベルで解明するため、再構成したクロマチンを鋳型に用いたin vitro転写システムを構築した。クロマチン再構成には大腸菌で発現させたヒストンと鋳型DNA、ヒストンシャペロンNAP-1、クロマチンリモデリング因子ACF、Topo-Iを用い、マイクロコッカルヌクレアーゼアッセイにより規則正しいクロマチンができていることを確認した。次にこのクロマチンを鋳型に用いて転写反応を行ったところ、精製した因子のみでは転写が全く起こらず、HeLa細胞の核抽出液を陽イオン交換セルロースP11で粗分画したフラクションを加えると、アクチベーターおよびp300依存的な転写がみられた。この結果は、クロマチン転写に必要な未知の因子がHeLa細胞の核抽出液中に存在することを示唆している。クロマチン上での転写制御を分子レベルで解析するためには、この未知分子を同定することが必須であると考え、イオン交換カラムなどを用いて精製を進め、クロマチン転写に必要な複数の活性を検出した。これらのうち、いくつかの候補分子をマススペクトロメトリーにより同定した。また、転写活性化に関わるアセチル化部位を調べるため、アセチル化されることが知られるヒストンH3およびH4のリシン残基をアルギニン残基に変えた変異体を作製し、クロマチンを再構成した。ヒストンH3の9,14,18,23,27番目のリシン残基を同時に変異させたものはほとんどアセチル化されず、転写活性化も見られなかった。一方、ヒストンH4の5,8,12,16番目のリジン残基の変異は転写にほとんど影響しなかった。個々のリジン残基の変異による転写への影響についても解析を行っている。
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