研究課題
分裂期における染色体凝縮は正確な染色体分配のために不可欠であり、コンデンシン複合体が染色体に結合することで成し遂げられる。しかし、分裂期終了時の染色体「脱」凝縮の制御機構やその役割についてはまったく理解が進んでいなかった。そこで、本研究ではコンデンシンが染色体から離れる仕組みを解析することによって、染色体「脱」凝縮の制御機構とその生理学的意義の理解を目的とした。21年度は分裂期特異的リン酸化酵素であるオーロラキナーゼによるコンデンシンのリン酸化とその後の脱リン酸化が、コンデンシンの染色体結合および離脱に密接に関わることを示した。22年度では、コンデンシンCnd2/Barrenサブユニットのアミノ末端5、41、52番目のセリン残基がオーロラキナーゼ依存的に分裂期を通じてリン酸化され、分裂期脱出時に脱リン酸化されていることが分かった。また、これらのリン酸化部位を非リン酸化状態に変換すると著しい染色体凝縮・分配欠損を示し、逆にリン酸化模倣状態に変換すると、染色体からコンデンシンが離脱しにくくなることも明らかになった。一方、コンデンシン温度感受性変異体と微小管変異体を同時に用いた遺伝学的解析により、コンデンシンが分裂期前期から終期まで継続的に働くことが正確に染色体分配を完了させるのに必要であることも示された。以上の結果から、コンデンシン複合体が分裂期の最初から最後まで継続的に働くことで娘細胞に正確に遺伝情報が継承されることが示唆された。そして、このコンデンシンの継続的役割はオーロラキナーゼによるコンデンシンのリン酸化とその後の脱リン酸化で厳密に制御され、染色体の凝縮・分配から「脱」凝縮への転換が保障されていると推察される。染色体「脱」凝縮の制御因子をさらに探索し、生理学的意義に迫ることが今後の課題である。
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Journal of Cell Science
巻: 124(11) ページ: 1795-1807
Molecular and Cellular Biology
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