研究概要 |
現在までにmRNAの輸送、局在に関わることが知られるFMRPが樹状突起スパインの形態異常を引き起こすということ(Comery TA et al., 1997)、mRNAの翻訳制御に関わるmicroRNAによりスパインの大きさが制御を受けるということなどが示されており(Schratt GM et al., 2006)、mRNAの局在化がスパインの形態形成、維持に密接に関与していることが明らかとなってきている。そこで、PAR-aPKCシステムとmRNAの局在化との関連性を調べるために、PAR-aPKCシステム関連因子のノックダウンによるスパインの形態への影響を指標としたスクリーニングを行った。その結果、aPKCによりその活性が抑制されることが知られ、微小管の安定性に関わることが知られるPAR-1bキナーゼのノックダウンにより、成熟後の海馬神経細胞において、スパインがフィロポディア様に変化することが明らかとなった。シナプス前終末との共染色などからも、この構造変化はスパインの形態維持の異常によるものであることが示唆される。また、免疫染色法により成熟神経細胞におけるPAR-1bの局在を観察したところ、樹状突起と、とりわけ樹状突起スパインに強い局在を観察することができた。成熟神経細胞におけるPAR-1bの生理機能、局在に関しては現在まで未解明のままであり、本研究によりPAR-1bの新しい生理機能の側面が明らかとなることが期待される。 現在、PAR-1bによるスパイン形態の維持のメカニズムとして、(1)mRNAの局在化の制御によるもの(2)翻訳制御複合体の制御によるもの(3)微小管のダイナミクスの制御によるもの、という仮説を立てて検証を行っている。
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