研究課題
F-BAR/EFCドメインは近年新たに見出された脂質結合・生体膜変形ドメインであり、アクチン細胞骨格制御やエンドサイトーシスに関与している。我々はF-BAR/EFCドメインを持つチロシンキナーゼサブファミリーFerに着目し、詳細な機能解析を行った。まず、Ferのキナーゼ活性に対するリポソーム添加の影響を検討したところ、直径約1-10μmのLMV(large multilamellar vesicle)では高濃度下でわずかにFerを活性化したのに対し、50-200nmのSUV(small unilamellar vesicle)は10μg/mlという低濃度下で強い活性化能を有することが明らかとなった。この結果は、FerのFXドメインを介した曲率の高い生体膜との相互作用によってチロシンキナーゼが活性化されることを示唆している。次にCOS7細胞内にFerを過剰発現したところ、マクロピノサイト-シスによるデキストランの取り込みが増大することが観察された。またFerのF-BAR/EFCおよびFXドメインを含む領域は、EGF刺激に伴って細胞膜辺縁部から形成されるdorsal ruffleの先端に局在することが明らかとなった。PLDによって産生されるPAはdorsal ruffleの形成とそれに伴うマクロピノサイト-シスに必須の役割を担うことが知られており、我々の結果からFerがPAシグナルをアクチン重合促進へと変換し、細胞膜背面側からの物質取り込みにおける膜動態を制御していることが示唆された。また、Ferの活性化が曲率の高い生体膜で特異的に誘導されることから、小胞が細胞膜から分離・切断される膜の狭窄部位においてアクチン重合を引き起こしていると考えられた。
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