| 研究概要 |
脂質二重層を構成する生体膜リン脂質はスフィンゴ脂質とグリセロリン脂質に大別され、その極性基や脂肪酸鎖の違いにより1000種類以上の分子種が存在する。ごれらのリン脂質は、膜二重層の細泡内外の非対称性、あるいは形質膜、各オルガネラ膜における特異的な分布など、厳密な制御のもとに構成されている。しかしながらこのような「生体膜リン脂質の空間的ダイナミズムを調節する代謝マシーナリー」は、未だ十分に理解されていない。本研究では、生体膜リン脂質のスフィンゴ脂質に着目して、生体膜スフィンゴ脂質の代謝マシーナリーと生物機能の解明を目指している。本年度は、セラミドの構造と機能の相関に関して、酵母遺伝学的手法を用いて解析を行った。.出芽酵母における複合スフィンゴ脂質(1PC)の合成酵素であるAur1pを抑制すると、複合スフィンゴ脂質の減少、及びセラミドが蓄積することで生育損傷が観察される。Aur1pの発現抑制株にセラミドの構.造修飾に関わる遺伝子(SUR2,SCS7,CCC2)を欠損させることで、生育損傷にどのような影響が見られるのか解析を行った。その結果、スフィンゴイド塩基の水酸化に関わるSUR2を欠損させると、Aur1p発現抑制による生育損傷に抵抗性となることが明らかとなった。逆に、」セラミドの脂肪酸のα-水酸化に関わるSCS7を欠損させると、Aur1p発現抑制による生育損傷が顕著に促進された。このようなセラミド構造修飾の欠損による感受性の変化は、セラミド合成酵素の抑制株(複合スフィシゴ脂質低下とセラミド低下を引き起こす)では観察されなかった。以上の結果より、セラミドで起こる二つの水酸化修飾は、セラミドの毒性を決定する上での重要な構造的ファクターであることが示された。
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