(研究内容)細胞内には微小管、アクチンなどの細胞内骨格が張り巡らされている。これらは細胞極性のコントロール、モータータンパク質による細胞内の物質輸送を担っており、オルガネラの移動、細胞分裂、神経細胞における軸索輸送、シナプスの形成など重要な役割を果たしている。LIS1、NDEL1は共に中心体に局在し、モータータンパクの細胞質ダイニンの重鎖と結合し、その機能を制御している。またNDEL1は中心体においてAurora-Aの基質となり、微小管再編の制御を行っている。さらにNDEL1は中心体特異的な脱リン酸化酵素・PP4の基質となり、微小管ネットワークのコントロールをしている。我々は神経細胞のMTOCにおいてもAurora-Aが活性化され、かつNDEL1をリン酸化することを見いだした。このことからmitotic kinaseであるAurora Aがpost-mitotic neuronにおいても何らかの重要な役割を持っている可能性を考え、その活性化の機序の解明を試みた。我々は神経細胞におけるaPKCによるAurora-Aの活性化の分子メカニズムとその下流で起こる作用機序について分子レベルでのひとつの重要な経路を証明することができた。 (研究の意義および重要性)我々は微小管ネットワークにおける細胞周期の制御と神経細胞の極性および軸索形成に分子レベルで共通したメカニズムがあることを初めて示すことができた。 将来的には複雑な神経極性を与える大脳皮質や海馬において同様の分子機構がはたらくのかどうかは非常に興味深く、マウス個体を用いた系でも行っていきたい。また細胞極性の決定だけでなく、神経細胞の遊走や細胞分化などにおける細胞周期制御因子の役割についても重要性を示唆する成果であったと考えている。
|