研究概要 |
細胞は、外界からの情報に従って、伸長と収縮という2つの動作を時空間的に協調(極性化)させることで、特定方向への運動を制御している。申請者はこの細胞運動シグナルの全体像を、プロテオミクス手法を用いて明らかにすることを目的している。この極性形成はイノシトールリン脂質シグナルを介し、RhoファミリーGタンパク質を調節することによって調節されている。本年度はイノシトールリン脂質シグナル解析に使用するイノシトールリン脂質変動細胞の作製、およびそれぞれの細胞におけるリン酸化シグナルの変動を、リン酸化プロテオミクスの手法を用いた解析を行った。リン酸化シグナルの変動は階層型クラスタリングにより分類し、どのタンパク質がどのイノシトールリン脂質で変動するか明らかにすることを試みた。この結果、非常に多くの分子が、膨大な変動パターン取ることが明らかになった。この結果は網羅的情報から細胞運動に必須なシグナルを抽出するシステムが必要であることを示していた。そこでまずプロテオミクスの情報を整理するためのデータベースの作製を行った。このデータベースには、リン酸化の変動および、変動のあった分子の情報(アミノ酸配列、ドメイン構造、機能、相互作用分子)をSwiss-Prpt,PFAMからデータを抽出、付記し、web上で参照できるシステムとした。次に非特異的なリン酸化シグナルを除去するために、リン酸化シグナルを限定するためのシグナル伝達地図の構築を行った。これは、イノシトールリン脂質の下流で働く分子(例Rho)の相互作用プロテオミクス解析を行うことで構築した。この成果の一部は次項で示す学会にて発表を行った。現在この相互作用地図を鋳型にリン酸化シグナル伝達経路を再構築する作業を行っている。この作業が終了し次第FRETを利用した空間制御メカニズムの解析に進む予定である。
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