研究概要 |
ケラチンは分化上皮細胞に特異的に発現する細胞骨格蛋白質であるにも関わらず、細胞に機械的強度を与えること以外の上皮特異的な機能は不明な点が多かった。申請者らは、ケラチン結合蛋白質Albatrossが分化上皮細胞の極性、主には細胞間接着装置複合体の制御に関わり、ケラチンがこれを促進することを見出してきた(Sugimoto, Inoko et al., J.Cell Biol.)。また、Albatrossと同様のドメインを持つTPHD分子群(トリコピアリン・ブレクチン類似ドメイン分子群)を見出し、これが細胞の分化状態に応じて細胞間接着部位あるいは中心体に局在してそれらを制御していることを明らかにしつつある。このことはTPHD分子群が分化と増殖の両方の制御に関わるbi-player分子であることを示唆しており、その個々の分子メカニズムを明らかにし、さらに統合していくことで、いまだ不明な点の多い分化と増殖の相互関係の解明が期待できる。 本研究では、このAlbatrossの上皮細胞極性制御における分子基盤の詳細を明らかにすることを目的とし、本年はAlbatross結合蛋白質の同定を多角的に行ってきた。そして、細胞増殖状態で中心体のAlbatrossを機能欠失(ノックダウン)させた結果から、Albatrossが微小管細胞骨格の重合核形成に関わる可能性を見出した。また、イーストハイブリッド法によるAlbatross結合蛋白質の検索では、分化上皮細胞の細胞間接着を制御する低分子量G蛋白質に結合する蛋白質を含む複数の候補を見出した。今後これらの結果をもとに、Albatrossと結合すると考えられる分子について、上皮細胞極性制御の観点からAlbatrossとの関連性を生化学的、細胞生物学技術を駆使して検討し、その分子基盤の解明を目指す。
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