ふと日常何気なく使っている手を見てみると、とてもおもしろい形をしていることに気付く。ヒトは手足に5本の指をもっており、それぞれの指は前後軸上に沿って異なる形態をしている。親指は他の指と比べて指骨の数が少なく短い。また小指は中央の3本の指に比べて小さい。それではこのようなそれぞれの指のかたち作りの違いはどのような分子メカニズムによって決まっているのであろうか? これまでの研究で、指が発生する時には指原器の先端の細胞群が重要であり、この領域に指間部からのBMP(骨形成成長因子)のシグナルが入る事が分かった。そしてこれらの細胞群をPFRと名付けた。PFRの細胞群は驚くべき事に後側からのシグナルにしか反応しないと言うunidirectional sensitivity(シグナルに反応する時に方向性がある事)を持っているという予備的知見を得ていたため、今年度にはそのメカニズムについて解析した。BMPシグナルの下流で活性化されるリン酸化SMAD1/5/8の抗体染色を行った結果、指原器の先端の後側だけに片寄ってシグナルが観察された。BMPR1Bのタンパク質の発現は一様に見られたことから、後側の指間部から特異的にシグナルが伝わっていることが示唆された。さらにこのシグンルの受け渡しにはシリアが関与していることも示唆された。このように、指形成に重要な細胞群の作用機序が判明した事で、今後の指の再生研究への応用も期待される。 また一方、多指のニワトリである烏骨鶏ではShhのプロモーターにポイントミューテーションが入っていることを発見し、Dev Dynに発表した(2011)。
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