本研究は、ウニの初期胚において一次軸形成と二次軸形成のインターフェイスで働くFoxQ2およびその下流因子が二次軸形成を阻害するメカニズムの解析を目的としている。FoxQ2マイクロアレイを行い単離した神経外胚葉特異的な下流因子候補8つについて、それぞれの発現および機能の解析を試みた。まず、一次軸および二次軸形成を乱した胚を用い、軸形成に関連するシグナル経路とそれらの因子の関係を探った。その結果、今回単離されたものは全て一次軸形成シグナルであるwnt/β-catenin経路を阻害した胚ではその発現部位が拡大した。一方、二次軸形成に必要なnodal経路阻害胚(背腹両方を欠損)では全ての遺伝子がその発現部位がほぼ影響を受けなかった。しかし、nodal過剰発現胚やもう一つの二次軸形成因子であるBMP2/4を阻害した胚(双方とも背側領域を欠損し腹側領域が拡大)では一部の遺伝子が発現抑制されることが示された。また、それら下流因子候補の過剰発現胚の外胚葉パターンを解析すると、二次軸を乱すような表現型は得られなかった。よって、現時点では今回得られた遺伝子の中にFoxQ2の下流かつ二次軸形成より前に機能するものは含まれていない可能性が高い。また、それぞれの機能阻害実験により二次軸依存的にパターニングされる神経外胚葉内に乱れを生じるものが得られているのでその詳細な解析を行っている。FoxQ2およびその下流因子が二次軸形成因子nodalの転写を制御している可能性をさらに探るため、nodalの第一イントロンをパフンウニから単離し平成22年度の解析に用いるためレポーターとして蛍光タンパク質(GFP)と結合させた。卵への導入効率と過去に他のウニで報告されている発現調節条件の再現性を検証した。その結果、FoxQ2発現部位でGFPの発現は見られないことの再現性は検証できた。FoxQ2抗体作成に関してはペプチド抗体作成を試みたが今年度は成功しなかったので、現在大腸菌により作製したFoxQ2のマウスへの免疫を始めている。
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