研究概要 |
形態形成運動に関して2つの組織、脊索形成と神経形態形成に注目して以下のような研究を行った。まず脊索に関しては脊索形成に必要な最小遺伝子セットは何かを明らかにするために、カタユウレイボヤの脊索に特異的に発現する遺伝子を網羅的に調べ配列情報と引用文献とともにリスト化した。その結果、133遺伝子がカタユウレイボヤの脊索において特異的に発現していることがわかった。これらの遺伝子の配列情報をもとに分子進化的解析を行い、進化的に保存されている遺伝子とホヤの系譜で独立に存在している遺伝子とに分けるところまでを行った。神経形成に関しては、カタユウレイボヤ幼生アクチンを可視化したところ,被嚢部を取り囲むアクチン性ネットワーク構造が発見された.この被嚢内部のネットワーク構造を調べるために,蛍光ラベルされたファロイジンを用いて,ホヤ幼生のFアクチンを染色した.共焦点顕微鏡で断層像を約100枚取得し,得られた画像を3D化することにより,ホヤ幼生全体のアクチン繊維を可視化した.被嚢部全体においてネットワーク状構造を形成していた.このような体の外側に長く突き出たネットワーク構造はほとんど知られていない.これらの幼生を囲む構造全体を'ASNET'と名付けた.より詳細に頭部ネットワーク構造を解析すると,ASNET全体を6つのサブネット構造(付着器間ライン、付着器-頭部神経間ライン、左右対称体幹部網、左右非対称体幹部網、尾部末梢神経間網)に分けることができた.特に左右非対称体幹部網は,観察したすべての幼生において左側だけに存在する珍しい構造であった.また、このASNETは受精後20~22時間の幼生期に最も発達し,その後消失することがわかった.このようなネットワーク構造は,他の亜目のホヤ(マボヤ,ヤワラカユウレイボヤ)でも見られたことから,ASNETはホヤではよく保存された構造であると考えられ,特に幼生期に重要な役割を果たしている可能性がある.
|