研究課題
本年度はホヤの神経管閉鎖という現象に対し、神経胚期から尾芽胚期までの細胞の幾何学的解析を行うために、神経特異的に発現を促すプロモーターの下流に蛍光タンパク質を組み込んだ遺伝子コンストラクトを作成し、ホヤ胚に導入した。これをDAPI染色と同時に共焦点顕微鏡撮影した後、ボリュームレンダリングを施すことで、全個体を細胞レベルでコンピュータグラフィック(CG)化した。このCG画像は実際の細胞の形態を反映しており、細胞の形態変化における定量的・幾何学的情報(細胞体積・表面積・扁平度・球形度・細胞数・位置・体軸角度)を多数得ることができた。これらの情報をもとに、記述された情報をスタンダードとして神経管閉鎖障害を模したSU4984による形態異常ミュータントを正常胚と比較した。その結果、興味深いことに、正常胚から得られた胚と比較し、異常胚では尾部表皮細胞の体積が大きくなっていること、脊索細胞の核位置の乱れが検出された。このミュータントはターゲットとなる遺伝子が既知であるため、この遺伝子が神経胚期においてこのような局面に寄与している可能性が示唆された。このように、小分子化合物を有効に用いることで最終的に神経管閉鎖というイベントは高分解能でさまざまなステップに分けることができ、遺伝子ごとに割り当てられた幾何学的役割を解明できると期待される。そのような高分解能な解析には細胞系譜と発生段階の情報を尾芽胚期のすべての割球にもたせる必要があるためにanatomical ontology階層構造情報をホヤの割球にもたせ、その情報をウェブサイトに掲載した(ホヤAnatomical ontologyに基づく細胞系譜情報: http://chordate.bpni.bio.keio.ac.jp/faba/cell_lineage2/)。このAnatomical ontologyを活用し、今後得られた形態形成異常ミュータントを細胞レベルで高精度に分類・登録していく予定である。
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Developmental Dynamics
巻: 239 ページ: 2278-87
Genome Research.
巻: 20 ページ: 1459-68
http://chordate.bpni.bio.keio.ac.jp/faba/cell_lineage2/