研究概要 |
器官形成期の動物胚の形態はどの動物も比較的よく似た形をもつ。尾索動物ホヤは器官形成期に脊椎動物と同様に尾芽胚という発生過程を経る。本研究では、カタユウレイボヤ尾芽胚のボディープランを知るために、尾芽胚を構成する全細胞形態をコンピュータ・モデルに変換し、全細胞の幾何学的な情報を抽出した。さらにコンピュータ・モデル上に再現された細胞の全てに細胞系譜情報を付加し、組織の3次元的な形態を観察した。以上の解析を通じ、1.本研究で用いられた胚は1580細胞から構成されること、2.その内訳は、表皮836,神経系227、間充織219、筋肉36、脊索40、内胚葉203であること、3.内胚葉索は左右1対の細胞列が交互に並ぶことで構成されており生殖細胞はこれらに挟み込まれていること、4.これまでに同定されていない組織が体幹側に1対同定されたことを明らかにした(Nakamura et al., Submitted)。このような細胞レベルのホヤ尾芽胚の特徴を明らかにしたうえで、共焦点顕微鏡を用いた4Dメージングによって、神経管形成過程における細胞の分裂・動きを1細胞レベルで追った。その結果、尾部側から頭部に"ジッパー"が移動することで生じる閉鎖に加え、哺乳類と同様に、頭部側から尾部側に向かっていく閉鎖の2種類が観察された。さらに、阻害剤による実験から、ホヤの神経管閉鎖において、尾部から頭部へ表皮細胞がジッパーのように閉じる後方からの動きと、前方神経板の頭部から尾部側への分裂後の陥入が必要であることがわかり、それらは独立して制御されている可能性があることが示唆された。
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