研究概要 |
切断した四肢に人工的に傷表皮形成を誘導するため、四肢組織や尾部組織の器官培養を行った。特に尾部組織は四肢と比べ皮膚と筋・骨組織との結合が密であるため、切断後の皮膚収縮の程度が少ない。そのため四肢組織よりも安定した条件で実験ができることから、主に尾部組織を用いて傷表皮やAEC形成の有無を解析した。 組織切片上では切断・培養開始後1日目から、移動してきた表皮細胞を切断面中央部で観察することができたが、whole-mountのtrypan blue染色の結果、実際に表皮がシートを形成しているのは周辺部から約200μm、2日目で約300μm、3日目で約500μmであった(切断面直径約2mm)。従って培養3日目においても多くの標本では中央部での表皮シート化が完全には終了していないことが分かった。ただし低頻度ではあるが、培養2日目から、表皮が切断面を完全に覆っている標本も見られることから、切断面が平らであるなど、何らかの最適条件下では最短2日で傷表皮の形成が完了すると思われる。 培養液中に様々な成長因子(FGF1,FGF2,FGF7,FGF10,TGFβ1,TGFβ3)を加えて、傷表皮形成の変化を調べた。各成長因子を添加した際の、AECマーカーとなる遺伝子(fgf8,sp9)の発現量をリアルタイムPCRで比較したが、有意な変化は観察できなかった。しかし形態的には、通常は細胞1-2層の傷表皮が、FGF7やFGF10を添加した際には肥厚化する傾向が見られた。現在、これを定量化して比較することを検討している。
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