研究課題
これまでに収集した始原生殖細胞の移動に異常が見られるメダカ変異体の中から、始原生殖細胞が生殖巣へと移動する過程に異常が見られる3系統、kamigamo、shimogamo、narutoについて、当該年度はポジショナルクローニングによる原因遺伝子の特定に着手した。変異体は南日本に生息するメダカ系統から作成されたので、遺伝的な背景が大きく異なる北日本に生息するメダカ系統と交配して変異をホモに持つF2個体を得た後、原因遺伝子の遺伝子座に密接に連鎖している多型マーカーをPCR-RFLP(Restr iction Fragment Length Polymorphism)法やPCR-SSLP(Simple Sequence Length Polymorphism)法によって調べた。これまでにkamigamo、shimogamo、narutoについて、それぞれ約1000、2000、500個のF2個体を用いて連鎖マーカーを調べたところ、3つの変異の存在が予想される染色体上の領域をそれぞれ約250kb,200kb,2000kb以下に絞り込んだ。これらの突然変異体の表現形から原因遺伝子として特定が可能な遺伝子はこの領域内に存在しない為に、始原生殖細胞の移動に関わる新しい分子機構を今後明らかに出来ると期待している。現在、より詳細な連鎖解析を進めて変異が存在する染色体上の領域を狭めているところである。特に、kamigamo、shimogamoの2つの変異体は、始原生殖細胞の異常な分布の表現形に高い類似性が見られると同時に、どちらも前腎管に嚢胞を生じる表現型も見られる。嚢胞腎はヒトで高頻度に見られる遺伝病であり、その発症の機構の解明という側面からも、これらの変異について特に優先的に研究を進展させる予定である。
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Experimental Animals Vol.59
ページ: 13-23