研究課題
始原生殖細胞の移動に異常が見られるメダカ変異体、kamigamo、shimogamo、narutoの3系統について、全てポジショナルクローニングによって突然変異の箇所を明らかすることが出来た。これらの変異体の責任遺伝子はいずれも、これまでに始原生殖細胞に限らず細胞の移動への関与が全く知られていなかったものであった。その為に、始原生殖細胞の移動に関わるこれまでに知られていなかった新たな分子機構が現在明らかになり始めている。narutoの責任遺伝子は、mRNAの3'末端にポリA配列が付加される際にシグナル配列を認識する複合体を構成する因子の一つであるCPSF6/CFIm68であった。そこでこれまでに始原生殖細胞の移動への関与が明らかになっているケモカインとその受容体、sdf1, cxcr7を3'RACEによって調べたところ、変異体胚では野生型よりも上流側でポリAの付加が起り、3'UTRの短いmRNAが生じていることが分かった。3'UTRは、miRNA等に認識されることにより、mRNAの安定性や翻訳の制御に関わることが知られている。事実、sdf1の体節部における発現が変異体胚では前方に異常に長いことが分かった。sdf1は始原生殖細胞に対して化学誘引物質として働くことが知られ、その濃度勾配に従って始原生殖細胞が移動の方向を決めていると考えられている。naruto変異体においては、3'UTRの短いsdf1 mRNAが、miRNA等を介した適切な消化から逃れる為にその後方へと濃い濃度勾配が失われたと考えられる。miRNAデータベースを検索すると、sdf1 mRNAの遠位3'UTR領域に結合すると類推出来る既知のメダカmiRNAが数種類見つかった。今後この変異体は、始原生殖細胞の移動におけるケモカインシグナリングの詳細な発現調節機構だけでなく、様々な遺伝子の3'UTRが生体内においてmRNAの転写後調節にどの様に関わっているのかを解析出来る貴重な材料になると期待される。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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水産育種
巻: 42号 ページ: 1-9
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