研究概要 |
本研究の目的は、ショウジョウバエ生殖幹細胞ニッチをモデルとして、「ニッチの場」を構成する分子メカニズムを解明することにある。特に、HSPGという細胞外環境を構成する糖タンパク質ファミリーの機能に着目している。21年度までに申請者は、卵巣の生殖幹細胞ニッチにおいてショウジョウバエのグリピカン(膜結合型HSPG)dallyがニッチシグナルであるDppシグナル経路を制御することによりニッチの場を形成することを明らかにした。ざらに精巣の生殖幹細胞ニッチにおいてdallyおよびもう一つのグリピカンであるdally-likeが生殖幹細胞の維持に必要であることを明らかにした。さらにこれらの成果を論文として報告した(Hayashi, et. al., 2009)。22年度は、これらの成果をもとに、実際にdallyが卵巣においてDppタンパク質の局在を制御するのかどうか(研究計画2および3)、さらに精巣においてdally-likeがニッチシグナル経路を制御するのかどうかを検証した(研究計画2)。その結果、卵巣においてdallyを異所的に発現した場合、Dppタンパク質の分布する領域が拡大することを明らかにした。このことは卵巣の生殖幹細胞ニッチにおいてdallyはDppタンパク質の局在を制御することによりニッチの場を形成することを示している。また精巣においてDally-likeが、精巣生殖幹細胞のニッチシグナル経路であるJAK/STATシグナル経路、およびGbbシグナル経路の活性を制御することを明らかにした。このことは精巣生殖幹細胞ニッチにおいてDally-likeがニッチシグナル経路の制御の中心的な役割を果たしていることを示している。
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