研究概要 |
本研究の目的は、ショウジョウバエ生殖幹細胞ニッチをモデルとして、「ニッチの場」を構成する分子メカニズムを解明することにある。特に、HSPGという細胞外環境を構成する糖タンパク質ファミリーの機能に着目している。22年度までに申請者は、卵巣の生殖幹細胞ニッチにおいてショウジョウバエのグリピカン(膜結合型HSPG)dallyがニッチシグナルであるDppシグナル経路を制御することによりニッチの場を形成することを明らかにした。さらに精巣の生殖幹細胞ニッチにおいてdallyおよびもう一つのグリピカンであるdally-likeが生殖幹細胞の維持に必要であることを明らかにした。さらにこれらの成果を論文として報告した(Hayashi,et.al.,2009)。さらに卵巣のニッチにおいてdallyが実際にDppタンパク質の空間的分布を制御することをDppタンパク質を可視化することにより明らかにした。23年度は精巣におけるグリピカンの機能を明らかにすることを試みた。その対一歩として精巣のニッチシグナル分子であるUpd(JAK/STATリガンド)、Gbb(BMPリガンド)の可視化を試み、これに成功した。さらにグリピカンがUpdの空間的分布を制御するかどうかを卵形成過程をモデルとして明らかにすることを試みた。この結果、卵巣においてdallyがUpdタンパク質の空間分を制御することを明らかにした。この結果はHSPGがJAK/STATシグナルを制御することを示した初めての研究である(Hayashi,et al.,論文投稿中)。現在、上記の結果をもとに精巣においてグリピカンが実際にニッチシグナル分子の空間的分布を制御するかどうかを検証している。
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