研究概要 |
現生霊長類・哺乳類の距骨および歯の計測をおこない,さらに動物標本の基礎データ(体重など)を標本所蔵機関のデータベースより取得した.その後,距骨の計測部位の検討と体重推定のための予備解析をおこなった.計測は,ネズミほどの小さいものからサイのような大きいものまでの約50種80個体を対象とし,合計約4,000個のデータを取得した.体重データはその種の平均体重ではなく,その標本の体重そのものを使用した.計測標本は,基本的に大人の個体(親知らずが生えている個体,あるいは骨端が完全あるいはほぼ癒合している個体)を対象とした. 距骨の計測部位は9箇所を設定し,それぞれの計測部位と動物の体重との相関関係を検討した.その結果,距骨の「滑車の幅」と体重との相関関係が最も良く,次に,距骨の「外側の滑車の長さ」と体重との相関関係が良いことがわかった.また,「滑車の幅」および「外側の滑車の長さ」は,実際の計測においても動物の種類の違いによる測定位置の変異が最も少なく,最も安定して計測できることがわかった,したがって,距骨による化石哺乳動物の体重推定のためには,「滑車の幅」,あるいは「滑車の幅」と「外側の滑車の長さ」とをかけ合わせた「滑車の断面積」が最も適していることがわかった. 一番単純な,「滑車の幅」と体重との回帰式は予備的ではあるが次のようになった: 「体重(グラム)の対数」=2.83×「滑車の幅(ミリメートル)の対数」+1.94 この式を使うことで,距骨化石からその動物の体重を定量的に推定することが可能になった.これは,化石動物の古環境解析や古動物相解析などに応用できる.
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