研究概要 |
平成21年度は635名(小離島が97名、大離島が538名)の血液サンプルや身長や体重などの基本的臨床データ、臨床的動脈硬化評価データを得た。小離島と大離島の比較では、研究協力者の年齢(小離島75.1±9.7歳、大離島67.9±10.8歳)が有意に高かった。小離島の高齢化が進行していることを反映していると考えられ、また両者の比較には年齢と性別の調整が必要と考えられた。年齢と性別を調整した血漿中葉酸濃度を小離島(n=97)と大離島(n=205)で比較すると、小離島8.6(7.9-9.3)ng/ml、大離島6.8(6.3-7.2)ng/mlと小離島が有意に高かった。我々は以前の調査で、ホモシステインが小離島で高く大離島で低いことを認めており、ホモシステインと逆相関する葉酸摂取量が小離島で低いためと考察していたが、逆の結果となった。その理由としては調査時期の違いによる可能性が考えられた。前回の小離島の調査は1月、今回の小離島の調査は5月に行われたため、小離島では季節性に葉酸摂取量が大きく変動し、そのためホモシステインも変動する可能性が示唆された。つまり、物流インフラの乏しい小離島では、自宅の畑で緑黄色野菜の採れる季節とそうでない季節には、大きな葉酸摂取量の差があると考えられる。 また、今年度は37サンプルにおいて、赤血球中葉酸を今年度より測定を開始したSRL(CLIA法)と、これまで依頼していたアラバマ大学バーミンガム校(MA法)の両者で測定した。両者は測定方法が異なっており相関を見る必要があった。赤血球中葉酸は、CLIA法=0.825×MA法+161.1,r=0.869,p<0.001と両測定法において違いはあるものの、高い相関係数を持っていた。次年度は同じ季節に小離島を変えて調査を行い、赤血球中葉酸やホモシステインについての結果も合わせて検討する予定である。
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