研究概要 |
平成23年度は、住民基本健診時同意の得られた748名(二次離島が329名、大離島が419名)の血液サンプルや身長や体重などの基本的臨床データ、臨床的動脈硬化評価データを得た。この研究期間の3年間で計2,664名分のデータを集め、436名に対して血清葉酸、赤血球中葉酸、ホモシステイン等を測定した。436名のうち2名はサプリメント摂取していると考えられたため、434名のデータを解析した。 血清葉酸は有意に赤血球中葉酸と相関した(r=0.656,p<0.001)。動脈硬化と関連するとされるホモシステインとは、血清葉酸、赤血球中葉酸とも有意に逆相関した(血清葉酸r=-10.171 p<0.001、赤血球中葉酸r=10.173 p<0.001)。次に人口約500人の二次離島であるH島、人口約3,300人の二次離島のN島、そして人口40,000人の離島であるF島において比較した。1年齢・性別に3地域に有意差は無かったが、ホモシステイン血中濃度は人口が少ない島ほど低値であった(F島10.1±3.7、N島8.1±4.8、H島6.4±3.7nmol/L,p<0.001)。ホモシステイン血中濃度と逆相関するとされる葉酸については、血清葉酸はN島が有意に高く(F島5.5±2.1、N島6.4±3.0、H島5.5±2.7ng/mL,p=0.002)、赤血球中葉酸は地域差を認めなかった(F島240±82、N島218±58、H島229±65ng/mL,p=0.13)。また、動脈硬化の指標である心臓足首血管指数、平均および最大の頸動脈内中膜複合体厚のいずれも地域差を認めなかった。 島によって葉酸やホモシステイン血中濃度に有意に差を認めたが、動脈硬化の指標の地域差は認めなかった。ほぼ同じ季節に調査を行っているため、この差は島毎に異なる食習慣の存在を示唆すると考えられるが、その差は動脈硬化の指標に影響を与えるまでには至って無かったのかもしれない。今後は男女別の解析や葉酸代謝に関連するMTHFR遺伝子多型などの結果をふまえて、データ解析を進め発表したい。
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