研究概要 |
出穂期突然変異系統を利用し、イネの出穂期制御に関与する新規遺伝子を単離することを目的として、すでに変異遺伝子の候補領域が決定されている早生突然変異系統HS112および晩生突然変異系統HS276については、詳細マッピング集団を育成し、変異遺伝子を単離した。その結果、HS112の原因遺伝子は染色体3に座乗する遺伝子(成果未発表のため遺伝子名は非公表)であることが明らかになった。一方、HS276の原因遺伝子は染色体6に座乗する遺伝子(同じく非公表)であることが明らかになった。発現解析の結果から、これらの系統はともに早生遺伝子Ehd1の発現制御に関与し、HS112ではEhd1の発現が誘導されることで、HS276ではEhd1の発現が抑制されることでそれぞれ出穂期が早生化および晩生化することが明らかとなった。これらの遺伝子は出穂期制御に関わる新規の遺伝子であることから、出穂期制御機構の解明に向け大きく貢献すると考えられる。 次に、多重突然変異系統を用いた未同定の出穂期遺伝子の探索を目的として、すでに遺伝子が単離されている早生突然変異系統X61、晩生突然変異系統HS169およびそれらの2重突然変異系統DMG2に新たな突然変異を誘発し、出穂期突然変異系統を作出した。各系統M_1個体由来M_2種子を播種し、3系統合計約15,000系統から出穂期突然変異と思われる個体をおよそ1,200個体選抜した。これらの個体の中には、野生型への変異誘発では表現型に反映されなかった遺伝子への変異も含まれていると考えられることから、今後の解析によって未同定の出穂期遺伝子の単離が期待される。
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