網羅的な遺伝子発現データの収集が進み、様々な細胞プロセスに関わる遺伝子発現制御ネットワークの解析が可能になっている。本年度は、ムギ類遺伝子発現情報を用いて共発現解析を行い、ムギ類の遺伝子共発現ネットワークモジュールの検出を進めた。特に、遺伝子発現情報が充実した大麦については、公共データベースに登録された、非冗長なオオムギの1347 Gene Chipデータ、45実験シリーズについて、遺伝子共発現解析を行った。Gene Chipに搭載された遺伝子間で、遺伝子発現パターンに基づいて重み付け相関係数を計算し、相関係数に基づいた遺伝子共発現ネットワークを描出した。さらに、ネットワーク推定アルゴリズムを用いて、サブネットワークモジュールへの分類を行った。それぞれのサブネットワークについて、オオムギ遺伝子とシロイヌナズナ、イネ、そしてブラキポディウムとの比較解析に基づいた遺伝子機能アノテーションとの関連づけを行った。比較解析により、オオムギ転写因子遺伝子の予測とGene Ontologyのアノテーションづけを行い、その分布から、それぞれのサブネットワークの機能の推定を行った。これらの結果から、モデル植物ゲノム情報との比較解析と組み合わせたオオムギの遺伝子共発現ネットワーク解析が、遺伝子探索に非常に有効であると考えられた。オオムギでの共発現解析結果は、オオムギの遺伝子発現ネットワークを初めて網羅的に探索しその機能との関連づけを行ったものであり、論文としてとりまとめた(Mochida et al.Plant and Cell Physiol.provisionally accepted)。また、イネ科植物の転写因子データベースGramineaeTFDBを作成し、その相同遺伝子をイネ科植物間で比較可能にした。
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