研究概要 |
本研究ではイネ葉からのアンモニア(NH_3)放出を検出するために、同化箱法を用いた測定環境に関して流量と捕集液(希硫酸)の濃度と量について検討し,測定法を確立した.この測定法を用いて,NH_4^+放出に対する環境作用,とくに温度および相対湿度について評価し,温度は30℃,また相対湿度は60%においてアンモニア放出は最大となった。これは,葉表面の気孔開度と密接に関連しており,アンモニア放出と同時に光合成・蒸散速度の同時測定を行ったところ,気孔伝導度は温度30℃,相対湿度60%において最大となった.さらにイネ葉からのNH_3放出速度,葉組織NH_<4+>濃度,NH_3を同化するグルタミン合成酵素(GS)活性,および光呼吸代謝の重要な酵素であるグリコール酸オキシダーゼ(GO)活性の日変化,葉のGS活性阻害およびGO活性阻害がNH_3放出速度に及ぼす影響を調査し,葉からのNH_3放出と光呼吸代謝との関連性について考察した.その結果,NH_3放出速度は6時以降増加し始めて,12-14時の2時間に最大値を示し,その後減少した.葉組織NH_<4+>濃度は13時に最大値を示す山型の日変化を示した,GSおよびGO活性は,7時のレベルから上昇し,13時に最大値を示し,その後低下した.これらの結果より,日中において高いGSでも十分に同化できないほどのNH_<4+>が,根で吸収され葉へ輸送される,あるいは光呼吸で生成されることによって葉内に蓄積し,葉からのNH_3放出が促進されていると考えられた.阻害剤を用いた実験では,NH_3放出速度はGS阻害区>GS阻害+GO阻害区>対照区の順に高かった.この結果は,光呼吸由来のNH_3が葉から放出されることを示唆している.以上より,イネ葉からのNH_3放出現象は,窒素吸収・同化および光呼吸系が複雑に関連して生じている生理現象であると結論した.
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