研究概要 |
前年度までに,イネ葉からのアンモニア放出の動態について評価し,窒素施用量の影響ならびに品種間差について明らかにした.また葉身からのアンモニア放出源として葉内窒素代謝由来のアンモニアと根から直接地上部へ輸送されるアンモニア由来の2種類があり,窒素施用量や品種により2つの放出源の割合が変化することを明らかにした.そこで,根の地上部へのアンモニア輸送に着目し,根におけるアンモニア吸収,アンモニア同化能力および根の活性ついて評価し,品種(コシヒカリ,Kasalath)間差異について検討した.供試材料は吉田氏液による水耕栽培でし,窒素施用条件として標準区(2.86mM),1/3N区(0.96mM)および1.5N区(4.29mM)を設けた. 地上部へのアンモニア輸送速度とアンモニア輸送量は,両品種ともに1.5N区>標準区>1/3N区となった.また,品種を比較すると1/3N区では差は認められなかったが,標準区および1.5N区ではKasalathが有意にコシヒカリよりも高かった.また,標準区および1.5N区における根の呼吸速度およびグルタミン酸合成酵素活性もまたコシヒカリにおいて有意に高かった.これらのことから,通常窒素施用量以上の場合,コシヒカリは根におけるアンモニア吸収およびアンモニア同化能力がKasalathよりも優れており,地上部へのアンモニア輸送量が少ないこと,またKasalathは根の呼吸の低下に伴い根におけるアンモニア同化能力那低下するために,地上部へのアンモニア輸送量が多いことが示唆された.以上のことから地上部へのアンモニア輸送能力は品種間差が認められ,根におけるアンモニア同化能力が密接に関与していることが示唆された.
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