H21年度の研究から、多くの関連する代謝産物が花期に生産されることが判明していたので、今年度のアメリカミシシッピ州での植物からの抽出物調製を花期に実施した。この抽出物は、今まで含有量が少なく分離困難であったセスキテルペンアルコール類やケトン体を多く含有していた。この抽出物から分離・精製またはカルボン酸からの還元反応によって調製したケトンのハスモンヨトウ幼虫に対する摂食阻害活性を実施したところ、ハスモンヨトウ幼虫に対して摂食阻害活性を示したセスキテルペンカルボン酸に対応するケトン体であるにも関わらず、ケトン体は供試昆虫に対して有意な摂食阻害活性を示さなかった。さらに構造活性相関に関する知見を得るためにアルデヒド体の獲得と昆虫摂食阻害活性評価を試みたが、現在、生物検定に使用する十分な化合物量が確保できていない。 また、アレチオグルマの化学生態学的特性を明確にするために植物表面の油滴を取り去った植物の調製、アレチオグルマ抽出物を塗布した植物に病害虫抵抗性の付与などを、ポット試験または野外試験については、有機溶媒や界面活性剤による植物表面の油滴の除去が困難であったことから、代替実験を検討中である。ガラス温室での栽培試験中に、グンバイムシによる被害が多く確認されたことから、本種の滲出物の主成分であるカラメネン型セスキテルペンカルボン酸類は、鱗翅目昆虫に対しては、防御的に機能するが、ハムシ類には効果を示さないことが予想された。同様な現象は生育地でもハムシによる食害を確認している。近年、日本でのグンバイムシの繁茂が旺盛なことから、アレチオグルマの日本での生育にとっては、これが繁殖抑制要因の一つとして機能すると考えられた。
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