除草剤抵抗性植物で除草剤処理後に発生するバイオフォトンの発生メカニズムを明らかにするため、本研究課題では、イネ培養細胞を材料とし除草剤解毒代謝能の変化とバイオフォトン発生との関係を解明する。 これまでイヌホタルイやコナギなどの雑草やイネの葉切片を用いた試験を行ってきたが、解毒代謝能の発達により除草剤への耐性があること、遺伝子解析が容易であること、さらにバイオフォトンの安定的な測定が可能な培養細胞系が確立していることからイネ培養細胞を実験材料として選定し、除草剤応答発光の解析を行った。50ppm以上のベンスルフロンメチル処理により、イネ培養細胞のバイオフォトンが顕著に増強し、処理1時間後に最初のピーク、処理6時間後に2つ目のピークを迎える2山型の発生パターンを示した。明瞭な応答が見られ、除草剤応答発光の発生メカニズム解析に適した実験系を確立できた。 この実験系を用い除草剤成分18剤について応答発光を調べた結果、対照に比ベバイオフォトンが増強するもの(10剤)、減少するもの(4剤)、変化しないもの(4剤)と、除草剤の種類によりバイオフォトンの応答は異なった。なお、発光パターンには作用機構による違いは見られなかった。今後、各薬剤の解毒代謝機構が明らかになれば、代謝機構と発光パターンの関係解析を行うことにより、発光パターンから代謝経路の推定できる可能性がある。 除草剤応答発光への解毒代謝酵素チトクロームP450の関与を明らかにするため、P450遺伝子の発現を変動させ、ベンスルフロンメチル応答発光の変動を調査することとしている。本年度は、イネのベンスルフロンメチル耐性への関与が報告されているチトクロームP450遺伝子CYP81A6およびペラルゴン酸解毒代謝への関与が報告されているCYP72A18をイネ培養細胞からクローニングした。
|