除草剤抵抗性植物で除草剤処理後に発生するバイオフォトンの発生メカニズムを明らかにするため、本研究課題では、イネ培養細胞を材料とし除草剤解毒代謝能の変化とバイオフォトン発生との関係を解明する。本年度は、除草剤解毒代謝に関与するチトクロームP450遺伝子の発現抑制株を作出し、その除草剤応答発光の変化を解析した。 イネ培養細胞からクローニングしたP450遺伝子CYP81A6(イネのベンスルフロンメチル(BSM)耐性への関与が報告されている)のBSM応答性をRT-qPCRで確認した結果、CYP81A6遺伝子発現は、BSM処理によりすばやく誘導され、0.5時間で処理前の10倍、1時間後には36倍になった。この遺伝子の発現抑制用RNAiベクターを作成し、アグロバクテリウム法によりイネ培養細胞を形質転換し、遺伝子発現が抑制された「抑制株」と、非形質転換体と発現量が変わらない「対照株」を得た。BSM存在下での細胞増殖を調査した結果、対照株は非形質転換体と同程度のBSM感受性だったのに対し、抑制株では感受性が10倍以上に高まっており、抑制株でBSM解毒代謝機能の低下が確認できた。 対照株のBSM応答発光は非形質転換体と同様の発光パターンを示したが、抑制株ではBSM応答発光の強度低下が認められた。この原因を詳細に調べるため、分岐鎖アミノ酸処理によるBSM感受性とBSM応答発光の変化を解析した結果、分岐鎖アミノ酸処理によりBSM感受性は非形質転換体と同程度になったものの、BSM応答発光は回復しなかった。この結果から、BSM応答発光の発生にP450による解毒代謝反応が関与していることが明確になった。P450は多くの除草剤の解毒代謝に関与することが知られている。本研究の成果から、バイオフォトンによる除草剤抵抗性雑草の判別技術は、BSMだけでなく、P450が解毒代謝にかかわるその他の除草剤の抵抗性についても判別できる可能性が示唆された。
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