研究概要 |
ブドウ、イチジク,モモの着果樹について、果実成熟期にオゾン濃度150ppb・5日間の曝露処理を行った。樹種・品種によって傾向は異なるものの、おおむね曝露個体では下位節位葉に可視被害が現れ、光合成活性、果実糖度、根重が低下した。ブドウを用いて^<13>C安定同位体により解析したところ、根への光合成産物の分配量が減少した。挿し木苗について、動画記録装置を用いて気孔観察の予備試験を行った所、気孔の反応が個々により異なり、オゾンの影響を確認することが困難であった。そこで、葉の生理活性から葉の状態を把握するとともに、個体光合成速度や個体の部位別乾物重を測定し、オゾン耐性を栽培的・生理的な側面から検討した結果、ブドウ、イチジクでは根量が低下しない品種も確認でき、品種間差がある可能性も考えられた。 以上のことから、オゾン曝露は着果の有無にかかわらず、光合成活性を低下させ、地下部成長量を抑制した。永年作物である果樹の根量の低下は、将来において、樹体の乾物生産力を低下させ、収量に影響する可能性がある。また、糖度といった果実の品質にかかわる部分にも影響を及ぼしている。オゾン曝露は、高品質・収量安定・樹冠拡大に潜在的なダメージを与えており、経年的な検討も必要であると考えられる。
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