研究概要 |
日本に自生するマタタビ属植物における一歳性個体の探索と遺伝的多様性の解明を行うために,北海道,東北,北陸および九州地方に自生するサルナシおよびマタタビを中心にサンプリングを行った.サルナシ47系統(青森県産,秋田県産,山形県産,岩手県産,新潟県産,福岡県産および宮崎県産),ウラジロマタタビ7系統(福岡県産および宮崎県産)およびマタタビ(山形県産,福岡県産,大分県産および宮崎県産)16系統を供試して,葉緑体DNAおよび倍数性を調査したところ,以下のような変異を検出できた.遺伝子型は,東北地方(青森県,秋田県,山形県および岩手県)および北陸地方(新潟県)のサルナシで検出される遺伝子型I型,九州地方(福岡県および宮崎県)のサルナシおよびウラジロマタタビで検出される遺伝子型II型,およびすべてのマタタビで検出される遺伝子型IIIに分けられた.同一地域内の系統はすべて同じ遺伝子型を示した.北陸地方のサルナシはすべて四倍体,九州地方のサルナシは二倍体あるいは四倍体,ウラジロマタタビはすべて二倍体であった.マタタビの葉緑体DNAおよび倍数性の変異は検出されなかった.北日本と西日本に自生するサルナシ個体群間で葉緑体DNAに変異があることが明らかにかった. 早期開花を示す個体の探索を行うために,サンプリングした植物体の枝を挿し木して苗を育成した.一歳性を示す生理生態的メカニズムを明らかにするために,花芽形成過程を観察し,相互接ぎ木を行った.活着率が低かったため,接ぎ木方法を改善するとともに,接ぎ木が成功した個体を用いて,花芽形成に関与する要因について今後明らかにする.一歳性の遺伝性を解明するために,一歳性個体と非一歳性個体との交配を行い,種子を得ることに成功した.播種して花芽形成するまでの期間を調査し,マタタビ属植物の一歳性の遺伝性を明らかにするための植物材料として用いることができる.
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