研究概要 |
低樹高開花性のサルナシ(Actinidia arguta)は日本では『一歳サルナシ』と呼ばれているが,その開花特性や育成過程は明らかになっていない. 日本に自生するマタタビ属植物における『一歳性』個体の探索と遺伝的多様性の解明を行うため,サルナシ47系統(青森県産,秋田県産,山形県産,岩手県産,新潟県産,福岡県産および宮崎県産),ウラジロマタタビ7系統(福岡県産および宮崎県産),マタタビ17系統(山形県産,福島県産,福岡県産,大分県産および宮崎県産)およびミヤママタタビ11系統(北海道産)の緑枝挿木苗を供試して,開花までの期間および生長量を調査した.サルナシの宮崎産1系統と採取地不明の1系統およびミヤママタタビ3系統が,挿木後2年以内に樹高30cm以下で開花した.倍数性はフルーサイトメーターにより,葉緑体DNAbPCR-RFLPを用いて調査した.低樹高開花したサルナシ宮崎系統は四倍体,採取地不明系統は六倍体であった.葉緑体DNAのrわcL領域をPCR-RFLP分析により分析したところ,サルナシでは2つの多型がみられ,低樹高開花性系統のうち,宮崎系統は南日本型,採取地不明の系統は北日本型を示した. 以上のことから,日本には低樹高開花性をもつサルナシが北日本と南日本の両方に自生していることが明らかになった.寒冷地に自生するミヤママタタビでは他の種よりも高い割合で低樹高開花性系統が含まれていたこと,宮崎産の低樹高開花性系統の自生地は標高1000メートル付近の山地であることから,低樹高開花性は寒冷な地域に適応するためにマタタビ属植物が獲得した形質である可能性が示唆された.
|