(1) 不嗜好性植物の生態系保全機能を明らかにするために、兵庫県篠山市においてシカの不嗜好性植物を用いた緑化試験を行った。試験地に植栽区と対照区を設置し、植栽区にウリハダカエデ、ミツマタ、イワヒメワラビ、ワラビなどを植栽した。スギ林の林内にウリハダカエデとミツマタの苗木を植栽し、その林縁部にイワヒメワラビなどの胞子・種子を播種した。平成22年度は植栽区と対照区のモニタリングを継続し、植栽個体の成長過程と不嗜好性植物の有無による植生の相違などを調査する計画である。(2)スギ林の林床に生育する不嗜好性植物の被度とその影響要因を明らかにするために、シカの高密度生息地域である兵庫県朝来市においてスギ林の植生調査と立地環境調査を行った。林床の照度が比較的高い林分では多くの種がみられ、オニヒカゲワラビ、オオバノイノモトソウ、マツカゼソウなどが優占する傾向にあったが、照度の低い林分では種数、被度ともに値は非常に低かった。このことから、シカの高密度生息地域に分布するスギ林の林床において不嗜好性植物による緑化を進めるためには、林冠木の間伐を行って林床の照度を確保する必要があることがわかった。(3)鹿児島県口永良部島において、シカの強度採食下にある照葉樹林の林床植生とマント群落の調査を行った。照葉樹林の林床ではわずかな種しか生育しておらず、いずれの種も被度は非常に低かったが、林縁部ではシマイズセンリョウとホウロクイチゴが優占する傾向にあった。これらの種は林縁部の緑化材料として有効であると考えられた。
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