(1)平成22年度までに兵庫県篠山市・養父市・豊岡市のそれぞれにおいて不嗜好性植物の緑化試験を行った。試験地ごとに緑化区と対照区を設置し、緑化区にイワヒメワラビなど不嗜好性植物の胞子または種子を播種した。ウリハダカエデ、ミツマタ、サクラソウについては苗を移植した。平成23年度はこれらの試験地で緑化区および対照区のモニタリングを実施し、不嗜好植物の定着状況と成長速度などを調査した。不嗜好性植物の発芽状況は悪く、ほとんどの種で発芽は認められなかった。イワヒメワラビについては発芽がみられたが、個体数はわずかで個体サイズも小さかった。一方、ウリハダカエデとミツマタの移植苗の定着状況は良好で、ほとんどの苗が定着していた。しかし、成長速度は低かった。サクラソウの移植苗はすべて枯死していた。主な死亡要因は夏季の乾燥であると考えられた。(2)平成22年度にシカが高密度に生息する鹿児島県口永良部島とシカがまったく生息していない鹿児島県中之島においで照葉樹林の植生調査を行った。平成23年度は中之島で補足調査を行うと共に、シカがまったく生息していない鹿見島県黒島においても照葉樹林の植生調査を行った。これら(3)島の調査結果を比較した結果、口永良部島の照樹林はシカの食害を強く受けており、林床生の裸地化が進行していることが確認された。また、種組成は中ノ島および黒島の照葉樹林と比べて著しく単純で、種多様性も非常に低かった。照葉樹林の林床の裸地化を抑制することができるような不嗜好性植物は認められなかった。
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