研究概要 |
都市における緑景観の変遷を把握し,年月の経過による緑量回復の限界と可能性を明らかにするため、視野内に占める緑の割合を示す緑視率により居住環境の緑量調査を行った。緑視率は人々の緑量感を表す指標であり、心理的評価と関連づけられ景観や緑デザインに利用されている。調査対象は1940年代から現在までに開発された住宅団地とし、45地域を選定した。開発年度の異なる地域の、現時点での緑視率の差異を検討することで、年月の経過による緑景観の変化を捉え、緑量の回復傾向や平衡状態となる制約条件を探った。 緑視率の測定については、各地域の公共道路より視点高による写真撮影を行い、各写真内の植生面積を計測し各地域毎の平均値を導出した。植物のクロロフィルによる光の波長の反射ぐ吸収の違いを利用し、近赤外線写真と可視光写真の輝度値の差から植生部分の判別を行った。 調査の結果、住宅団地の開発が古い地域は緑視率が高く、新しい地域は低い傾向がみられた。年月の経過によって緑視率が増加する傾向がある。推測値より開発後50年程度の年月を経た古い住宅団地においても平衡状態には達しておらず、今後も緑視率の増加が見込まれる。 また、地域の環境要因の違いにより緑視率の差異がみられ、住宅の敷地面積や建ぺい率の影響が認められた。街路樹と公園の存在は、緑視率の増加へ貢献している。ただし、これらの環境条件の違い以上に年月の経過による影響が強く作用していることが示され、緑量の回復は年月の推移に委ねられている状況であると考えられた。
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